カルバペネムは広域抗菌薬として有名な抗菌薬です。
今回は、カルバペネムの基礎から、症例への介入ポイントを2つ紹介したいと思います。
病院、薬局での症例介入の仕方がわからなくて困っている新人さん、学生さん
認定、専門の症例報告で困っている方のお役に立てればと思います。

カルバペネムについて
構造式・作用機序
初めにカルバペネムについての復習です。
メロペネムをはじめとするカルバペネムの構造は、
セフェム系抗菌薬の硫黄(S)の部分が炭素(C)に置き換わった構造を有します。
カーボン(C)を有するのでカルバペネムと覚えましょう。

構造式も国家試験に出題されるので、βラクタム構造は覚えておくと良いと思います。
作用機序はペニシリン系やセフェム系と同じく、
ペニシリン結合タンパク(PBP)に結合し、細胞壁の合成を阻害することで抗菌作用を示します。
抗菌スペクトル
カルバペネム系抗菌薬は広いスペクトルを有しています。

カルバペネムはなんにでも効く、
最強の抗菌薬、切り札のイメージだね

そこは少し違うね。
スペクトルは広いけど、無効な菌種もいるよ。
それに、スペクトルの広さと強さは関係ないしね。

誤用、乱用に気を付けないといけないですね。
初めにカルバペネムが有効な菌種を考えましょう。
グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌のみでなく、緑膿菌や嫌気性菌に対して
幅広い抗菌スペクトルを有します。
ですので、逆にカルバペネムが聞かない菌種を考えましょう。
- MRSA
- Ent. faecium(腸球菌)
- バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
- Clostridioides (以前は、Clostridium)difficile
- レジオネラ、クラミジア、マイコプラズマ
- 真菌、ウイルス
カルバペネムが「何にでも」効かないことは把握しておきましょう。
また、
緑膿菌にも有効ですが、抗緑膿菌活性を有する抗菌薬は他にもあります。
嫌気性菌に対してもクリンダマイシンや、メトロニダゾールでも十分なこともあります。
カルバペネムは「切り札」であることに違いがありませんが、
取っておくからこその「切り札」です。
カルバペネムの使いどころ
カルバペネムの使いどころについては諸説あります。
しかし、原則は以下の2つです。
①カルバペネムしか有効な抗菌薬が無い。
②起因菌が何かわからない、複数の可能性があり、かつ患者さんの様態が悪く培養結果を待てない
カルバペネムしか有効な抗菌薬が無い場合、厳密にはありません。
しかし、ESBL産生菌やAmpC過剰産生菌に対してはカルバペネムが選択される場合が多いです。
ESBL産生菌に対しては、軽傷(菌血症等でなければ)であればセフメタゾールが有効です。
AmpC過剰産生菌に対しては第4世代セフェムのセフェピムを選択することもあります。
②の場合には、壊死性筋膜炎の初期治療や混合感染の場合があります。
起因菌が特定できればもちろんスペクトルを絞って抗菌薬を使用します。
また、抗菌薬を使用する際に、患者さんの状態が悪く、起因菌の培養結果を見てからでは
手遅れになる場合には、カルバペネムなどの広域スペクトルの抗菌薬で治療を開始し、
de-escalationをする方法が行われます。
このde-escalationの考え方は岩田先生の抗菌薬の考え方、使い方の中でも紹介されています。
初心者向けの10の掟のうちの1つにあげられています。
カルバペネムについても使いどころについてまとまっているので、
もっと深く勉強したい方にはおすすめです。
それでは、本題のカルバペネムの介入事例を紹介したいと思います。
髄膜炎に対するカルバペネムの投与量
抗菌スペクトルを外せない状況の一つに、原因菌が確定する前の髄膜炎があります。
髄膜炎の初期治療案にメロペネム+バンコマイシンがあります。
前提条件は以下の通りです。
- 緑膿菌までカバーする必要のある院内発生や免疫抑制患者さんを想定しています。
- 緑膿菌をカバーするなら第4世代セフェムでもよいとも思います。
- MRSAを想定してバンコマイシンを併用する。
MEPMの投与量は一般的に1g q8hrです。
しかし、髄膜炎でその量は不十分です。
そこで、介入が必要です。
髄膜炎の初期治療に対して以下の抗菌薬を提案した。
メロペネム 2g q8hr+バンコマイシン 1g q12hr
なお、髄液培養を取り、原因菌が判明したのちには
適切な抗菌薬への変更を行う。
メロペネムを髄膜炎に対して投与する場合は2g q8hrです。
どうしても髄膜炎にカルバペネム系を使用するのであれば自分はMEPMを推奨します。
そして、抗菌薬の投与前に培養を取る(お願いする)ことをお忘れなく。
バルプロ酸を使用している患者に注意
メロペネムをはじめとするカルバペネム系では
薬物間相互作用で気を付けることがあります。
バルプロ酸との併用が禁忌です。
カルバペネムとの併用で、バルプロ酸の血中濃度が低下し、痙攣を生じる可能性があるようです。
そのため、介入が必要です。
てんかんの既往でバルプロ酸の内服歴のある患者に医師から
緑膿菌が疑われるから、メロペネムを投与したいと希望があった。
しかし、カルバペネム系抗菌薬はバルプロ酸との併用は禁忌であるため、
代わりにタゾバクタム/ピペラシリンの投与を提案した。
緑膿菌=カルバペネムではありませので、
バルプロ酸と相互作用のない、抗緑膿菌活性を有する抗菌薬を使用すれば解決です。
例を挙げると、セフェピムやタゾバクタム/ピペラシリン、セフタチジム(緑膿菌だけなら)です。
逆に、抗緑膿菌活性を有する抗菌薬を使うのは緑膿菌を疑った時だけです。

カルバペネムとバルプロ酸との相互作用は国家試験にも出てますね。


97回だと自分が受験したときの問題だね。
ちなみにですが、岩田先生の書籍の
初心者向けの10の掟のうちの1つに併用薬を確認するというのがあります。
薬剤師の出番ですので、是非介入できるようにしたいですね。
まとめ
カルバペネム系の症例介入、症例報告できる介入ポイントを紹介しました。
- カルバペネムが無効な菌種を確認する
- メロペンは髄膜炎には2g q8hrが適正量
- バルプロ酸との併用は禁忌、他の抗緑膿菌活性の抗菌薬に変更
日々の処方提案や症例介入に活かしてみてください。
抗菌薬についてもっと勉強したい場合は、下記の書籍がおすすめです。
興味のある人はご覧ください。
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