セファゾリンはよく見かける抗菌薬の一つだと思います。
今回は、セファゾリンの基礎から、症例への介入ポイントを4つ紹介したいと思います。
病院、薬局での症例介入の仕方がわからなくて困っている新人さん、学生さん
認定、専門の症例報告で困っている方のお役に立てればと思います。

セファゾリンについて
構造式・作用機序
初めにセファゾリンについての復習です。
セファゾリンの構造はβラクタム環を有しています。
国家試験の過去問でもβラクタム構造が出題されています。
学生さんは構造も覚えておくと良いと思います。

作用機序はペニシリン系と同じく、
ペニシリン結合タンパク(PBP)に結合し、細胞壁の合成を阻害することで抗菌作用を示します。
抗菌スペクトル
まず、セファゾリンが有効な菌種についてです。
主に黄色ブドウ入金や連鎖球菌、表皮ブドウ球菌などのグラム陽性球菌に対して有効です。
これらの菌による軟部組織感染症、骨髄炎、感染性心内膜炎、
カテーテル関連感染症、術後感染症の予防などに対して用いられます。
また、同じスペクトルを有する経口の抗菌薬はセファレキシンです。
感染性心内膜炎や骨髄炎など治療が4週間を超える場合、後半戦は経口に切り替えることも可能です。
セファゾリンで治療していたのに退院時にはレボフロキサシンとならないように
経口切り替えの原則は、同じスペクトル、高いバイオアベイラビリティーです。
他の抗菌薬でもこの考え方は基本になりますので確認しておきましょう。
毎回おすすめしている岩田先生の著書「抗菌薬の考え方、使い方」
岡先生の著書「抗菌薬プラチナマニュアル」でも紹介されています。
詳しく勉強したい方にはおすすめです。
番外編:腸球菌には気を付けて
セファゾリンはグラム陽性球菌には有効ですが、注意すべき菌がいます。

グラム陽性球菌になら何でもいいの?

全てではないね。
特に腸球菌には気をつけようね
グラム陽性球菌でもセファゾリンは腸球菌(Entrococcus)には無効ですので注意しましょう。
ちなみに、感染症治療で注目すべき腸球菌には2種類います。
それぞれ、有効な抗菌薬が異なります。
- Entrococcus faecalis:アンピシリンが有効
- Entrococcus faecium:アンピシリン無効。バンコマイシンが第一選択
腸球菌を見つけたら必ず菌種を最後まで確認しましょう。
それでは、本題のセファゾリンの介入症例を紹介したいと思います。
セファゾリンの適正投与量
セファゾリンの投与量について添付文書を確認してみましょう。

ポイントは「1日量成人5g(力価)」の部分です。

ん?
1日5 gを3回に分ける?どうやるの?
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)に対する第一選択薬として使われています。
しかし、添付文書を見ると投与量は最大1日5gと記載されています。
実際は、数々の書籍に記載されているようにセファゾリンの投与量は2g×3回/日です。
公知申請のおかげで、保険適応もあります。
その一方で、正しい投与量で投与されていない事例を目にします。

セファゾリン1 g q8 hrや2 g q12 hrの処方せんを見たことありますね。
そこで、介入が必要です。
血液培養からMSSAが検出された患者さんの治療にCEZを提案した。
投与量はセファゾリン2 g q8 hrとした。
また、医師には添付文書の記載量よりも多いが、保険適応上も問題の無いことを説明し、
提案した治療量での治療が開始された。
抗菌薬は正しい投与量で投与されてこそ最大限の力を発揮できます。
セファゾリンの適正投与を目指して頑張りましょう。
髄膜炎への使用はダメ、ゼッタイ
黄色ブドウ球菌や肺炎球菌などのグラム陽性菌に対して
骨髄炎や脊椎炎にも有効なセファゾリンですが、
セファゾリンを使ってはいけない疾患があります。
セファゾリンは髄液の移行性が非常に悪いです。
そのため、髄膜炎や脳膿瘍などの中枢の感染症には絶対に効きません。
そこで、介入が必要です。
血液培養からMSSAが検出された患者さんの治療にCEZ 2g q8hrで治療を開始した。
しかし、精査のためのCTで感染性の脳膿瘍が疑われた。
セファゾリンは中枢移行性が悪いため、以下の抗菌薬への変更を提案した。
セフトリアキソン2g q12hr+VCM 1g q12hr
提案した治療量での治療が開始された。
「中枢の感染症、中枢転移した感染症にセファゾリンは無効」
必ず覚えましょう!
術後感染症予防への使用
セファゾリンは術後の感染症予防のために術前に投与されます。
主に表皮に常在するのグラム陽性球菌(表皮ブドウ球菌、連鎖球菌など)をターゲットにしています。
そのため、セファゾリンがちょうど良いスペクトルになり選ばれています。
術後感染症予防に対するセファゾリンの使い方は
日本化学療法学会より術後感染症予防抗菌薬適正使用に関するガイドラインが出ています。
HPでも見ることができるので周術期に関わる先生方はぜひ、ご一読ください。
周術期におけるセファゾリンの介入ポイントは以下の通りです。
- 予防投与量はセファゾリン1g/回(体重80kg以上には2g/回)
- 投与間隔は半減期の2-3倍(3-4時間毎)
- 腎機能が悪化している患者さんには投与量を下げず、間隔をあける
- アレルギーで使用できない時の代替薬はクリンダマイシン、バンコマイシン
- セファゾリンの投与は切開の1時間前
- 投与は原則24時間で問題なし
術前の患者さんのこれらを確認するだけでも一歩進んだ周術期管理ができると思います。
セファゾリン対バンコマイシン?
カテーテル関連感染症や軟部組織感染症などが疑われた場合、
グラム染色の結果、グラム陽性球菌が検出されたとします。
ここで、黄色ブドウ球菌をターゲットと考える場合、
MSSAかMRSAかという判断が必要になる場合があります。
特に患者さんが重症の場合、セファゾリンとバンコマイシン、どちらを投与しますか?

どっちにも効果があるからバンコマイシン!

正解は両方投与するだよ。
少し、ひっかけ問題だったかもね
MSSAに対してはセファゾリンの方がバンコマイシンと比較して効果が高いという報告もあるため
患者さんが重症の場合には療法を同時に投与して、
培養結果を見てからターゲットを絞ることがあります。
※この方法についてはエビデンスには乏しく、意味がないという意見もあります。

同系統の薬剤の併用=間違い、
というわけでもないので理由を考えましょう。
重症の患者さんではあえて初期投与では併用して、MSSAであればセファゾリンのみにする
初期治療での介入機械があれば提案してみましょう。
まとめ
今回はセファゾリンの症例介入、症例報告できる介入ポイントを紹介しました。
- セファゾリンの適正投与量は2g×3回
- 髄膜炎などの中枢感染にセファゾリンは使ってはいけない
- 術後感染症予防でのセファゾリンの使い方
- バンコマイシンとセファゾリンの併用
日々の処方提案や症例介入に活かしてみてください。
抗菌薬についてもっと勉強したい場合は、下記の書籍がおすすめです。
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