感染症の勉強を始めようと思ったとき「抗菌薬も微生物も感染症も種類が多い」「覚えることが多くて何から勉強すれば良いかわからない」「後輩から何から勉強すれば良いか聞かれて困った」など感染症=覚えることが多いと考えている先生方も多いと思います。
自分は大学病院に勤務し10年以上ICU、外科、腫瘍内科病棟で感染症治療に介入してきました。
今回は自分が後輩からの「初めて感染症を勉強する場合、何から勉強すれば良いか」という疑問の答えを考え、初めて感染症を勉強する時に考えるステップを5つ選びました。
この記事を読むことで、感染症の考え方を学習することができます。
感染症を勉強する時は、感染臓器を特定する、原因菌を考える、原因菌に対する第一選択の抗菌薬を投与する事が考え方の基礎になります。そして、はじめに押さえたい感染症5選、原因菌10選、抗菌薬10選を紹介します。勉強のポイントを押さえて、明日からの治療に活かしましょう。
感染症の考え方の基本の3要素
抗菌薬の基本となる考え方は感染症の「感染臓器」、「原因菌」、「抗菌薬」を考えることです。この3つの考え方は多くの感染症の書籍に書かれている内容です。自分のおすすめする「抗菌薬の考え方・使い方」や青木先生の「レジデントのための感染症マニュアル」にも記載があります。
特に、「抗菌薬の考え方・使い方」は感染症の考え方を勉強するにはおすすめの書籍です。紹介した記事もありますのでご覧ください。
感染症の書籍でも感染症の「感染臓器」、「原因菌」、「抗菌薬」の3つのカテゴリーで分けて書かれている物も多いです。特に、感染症プラチナマニュアルや海外で広く使用されているサンフォードマニュアルでも同様の分類で記載されているのでおすすめです。
そのため、感染症を勉強するためには、この「感染臓器」、「原因菌」、「抗菌薬」の3つのことについて学習することが必要です。また、この3つは今回紹介する「考え方」のコアになる部分なります。
感染症治療の5ステップでの考え方
感染症治療の考え方の基本は以下の通りです。
1:感染症であることを確認する
はじめに感染症かどうか確認します。
白血球が高くて、CRPが上がって、熱が出たら感染症でしょ?
その3つで判断するのは良くない例で紹介されているね。
まずは、他の疾患を除外して、感染であることを確定または、推定します。
2:感染臓器を特定する
次に感染臓器を特定します。身体所見や既往歴、生活歴など様々な要因から、感染臓器を特定、または推定します。そこで大切になるのが培養です。感染が起こっている場所(臓器)には病原体がいるはずです。そのためにも培養をとりましょう。血液培養、尿培養、喀痰培養の3つは必ず、感染部位の疑いによって髄液や膿などを追加しましょう。
いきなり広域の抗菌薬を使うのはダメなの?治りそうだよ?
絶対にダメ。なぜなら、臓器を特定すると菌の種類も推定できるからね。
感染臓器からは病原体を推定できます。想像してください。大腸菌による肺炎をイメージできますか?、肺炎球菌による尿路感染を想像できますか?もちろん絶対ではありませんが、多くのケースでそれらは候補にあげないと思います。
このように、臓器が特定できれば感染の原因菌を絞り込むことができます。
3:原因菌を特定、推定する
感染症では臓器により原因となる病原体はおおよそ絞られます。例えば、尿路感染では多くが大腸菌やリステリア菌です。他に腸球菌や院内では緑膿菌などが考えられます。また、肺炎では肺炎球菌やインフルエンザ菌が、カテーテル関連血液感染では黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌を考えます。このように、感染症の臓器を特定または、推定することで、原因となる原因菌を絞り込むことができます。
感染症はたくさんあるから全部覚えられないよ
よく見る(コモンな)感染症から勉強するといいよ。
病院で出会うコモンな感染症には以下の5つが挙げられます。はじめにこの5疾患を勉強してその代表的な原因となる病原体を確認していきましょう。
次に、治療の対象となる病原体の特徴を確認しましょう。はじめに押さえておきたい菌を10種類紹介します。この10種は頻繁に遭遇するため、ぜひマスターしましょう。
それぞれの特徴や戦い方については以下の記事にまとめてあります。リンクを貼っておきますので、ご覧ください。
4:感受性のある抗菌薬を投与する
いよいよ、次は感受性のある抗菌薬を投与します。原因菌の候補に対して「適切な抗菌薬」を「適切な量」で「適切な期間」投与します。初回治療は、候補となる菌や外してはいけない菌を広くカバーできる抗菌薬を投与します。そして、各種培養や感受性試験の結果を確認した上で、デ・エスカレーションします。
抗菌薬についても、はじめに押さえたい抗菌薬を10種類紹介します。
この10種類の抗菌薬の使い方をマスターすることで、主な感染症の初期治療やデ・エスカレーションする時の使い方を確認しましょう。詳細をまとめた記事もありますので、ぜひご覧ください。
効果を評価
最後に抗菌薬の効果を適切な方法で評価しましょう。
白血球、CRP、発熱は使えないよね?
もちろん。感染症は臓器で起こっているから、その臓器に特異的な指標で評価しないといけないね。
例えば、肺炎であれば呼吸状態の改善が挙げられます。呼吸苦の消失や酸素化の改善があります。敗血症であれば、カテコラミンの投与量低下や意識状態の改善、循環不全の改善が挙げられます。このように、各臓器での機能の改善や培養での菌の陰性化も指標として利用することができます。
また、各臓器に特異的な指標を用いた評価と合わせて、必要な期間の抗菌薬投与を行いましょう。症状が改善しても長期の抗菌薬治療が必要な感染症もあります。また、肺炎では、胸部レントゲンで陰影が残っていても治療を終了する場合があります。詳細は書籍で確認していくと良いと思います。全て覚えて対応するより、調べる方法をしっていることが重要です。
自分は感染症プラチナマニュアルで治療期間について確認し、提案しています。毎年改訂されるため、これから勉強を始める先生にもおすすめの一冊です。
まとめ
今回は感染症を考える時に押さえるべき5つのステップについて紹介しました。
この5つのステップを確認しながら治療を進めていくと理解が深まり、治療もうまくいくと思います。各論については、今回の記事でも紹介した書籍などで調べながら進めていくと良いと思います。
感染症の考え方を理解して、実際に症例への介入ができるように頑張ってください。症例介入できた内容は症例報告にまとめて、抗菌化学療法認定薬剤師の取得を目指すのも目標になると思います。関連記事のリンクを貼っておきます。よろしければご覧ください。
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