失敗しない!病棟異動で薬剤師が押さえるべき業務引き継ぎのコツ

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「次年度からいよいよ病棟配属だ‼︎何を確認すればいいんだろう?」「病棟が異動になった…後輩にきちんと引き継げるだろうか?」

病棟異動は薬剤師としての経験を広げるための重要な機会です。しかし、特に新人・若手薬剤師にとって、慣れない環境での業務スタートには不安がつきものです。実は、病棟の異動(初の配属)その成否を分けるのは「引き継ぎの質」にあります。

私は病院薬剤師として10年以上、数々の病棟異動を経験し、多くの引き継ぎ行ってきました。また、後輩の異動サポートにも携わってきました。その経験から、引き継ぎが異動後の業務の質を大きく左右することを実感しています。

ある新人薬剤師は、準備不足のまま異動を迎え、重要な患者情報の把握に時間がかかり、チーム医療にスムーズに入れないことがありました。一方で、体系的な引き継ぎ準備を行った薬剤師は、異動初日から自信を持って業務に取り組めています。

この記事では、病棟異動を成功に導く具体的な引き継ぎのポイントをご紹介します。私の経験に基づく実践的なアドバイスで、あなたの新しいスタートを力強くサポートします。

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引き継ぎ時に確認すべき3項目

病棟の引き継ぎで確認する内容は多岐にわたります。今回は内容を整理するために「業務」「人間関係」「加算」の3つに分けて紹介します

引き継ぎで確認すべき3つの項目
  • 業務(毎日、毎月、年数回)
  • 人間関係(薬剤師、医師、看護師、事務)
  • 加算(年間目標、ノルマ)

確認すべき日々の業務内容とは?

はじめに病棟での薬剤師業務内容です。病棟での業務には様々なものがありますが、わかりやすく毎日の業務、月単位の業務、年数回の業務に分けて考えましょう。

業務内容
  • 毎日の業務:持参薬確認、処方監査・確認、問い合わせ、管理薬の確認、実務実習
  • 月単位の業務:配置薬の確認、カンファレンスへの参加
  • 年間の業務:勉強会の実施

毎日の業務

はじめに毎日病棟で行う業務を確認しましょう。気にするポイントは時間が決まっている仕事、優先度・緊急度が高い仕事です。

持参薬確認

病棟業務の基本となるのが持参薬確認です。患者さんの【入院する時間帯】と【曜日ごとの人数】、【完了させるべき時間】、【他職種への申し送り方法】を確認しましょう。もちろん、記載すべき項目や代替薬の提案など基本となる部分はできることが大前提です。また、持参薬の回収と返却は誰が行うのかの確認も忘れてはいけません。

他職種の業務にも影響、律速となるので迷惑をかけないように確認しましょう。

異動直後は”特に”他職種への迷惑となることは避けましょう。常に自分が律速にならないよう配慮することが何より大切です。

処方監査・確認

次に処方の確認です。内服、注射の処方はもちろん、指示薬の確認も忘れてはいけません。決まっている処方内容(セット処方)、処方の傾向があれば必ず共有してもらいましょう。

もちろん、すべての患者さんのカルテを毎日確認するのは非効率です。抗がん剤、ハイリスク薬、TDMが必要な特に注意が必要な薬剤をデータから抽出し、優先順位をつけて効率的に確認する方法を聞いておきましょう。確認する順序決めはシステム化できるなら優先的に行いましょう。

また、施設によっては各病棟の薬剤師が処方を確認・修正してから処方せんや注射せんの調剤を開始するところもあります。その場合は、確認完了の期限も共有しましょう。

問い合わせ

処方の内容確認や修正、処方提案の方法を確認しましょう。後述しますが、問い合わせの方法(電話、対面、院内チャット、カルテ記録など)は緊急度によって使い分けが必要です。医師の時間を必要以上に奪わないよう配慮を忘れてはいけません。

また、よくある問い合わせ(疑義照会を含む)内容は過去の記録から自分で確認しておきましょう。これは自身でもできることなので、引き継ぎ時間も節約しましょう。

管理薬の確認

病棟には麻薬や向精神薬、毒薬など管理薬が配置、処方が保管されています。毎日帳簿での管理が必要な場合があるので、保管場所鍵の管理方法(暗証番号)、帳簿の場所を共有しましょう。

また、過去にあったトラブル事例を共有しておくのもおすすめです。特に麻薬事故は続くと病院としての対応が必要になるので気をつけましょう。

実務実習

病院、病棟によっては薬学生の実務実習を担当することもあります。実習の時期実習内容、担当させるのに適した患者さん評価方法を確認しておきましょう。

特に、他職種にお願いしないといけないことがある場合、早めに対応できるようにしましょう。

まとめ

毎日行う業務は特に時間が決まっているもの、期限のあるもの、薬剤師が律速になってしまうものを中心に確認していきましょう。そうすることで1日の時間の使い方をイメージすることができます。

月単位の業務

次は週、月単位での業務です。曜日や時期が固定されているものを確認していきましょう。特に薬品管理に関する部分は業務の効率化や病院経営にも関わる部分なので「なぜやっているか?」を意識しながら確認していきましょう。

配置役の確認

病棟にある配置薬の確認は施設によっては薬剤師が行っていないところもあるかと思います。今回は薬剤師が行う前提で解説します。

まずは配置薬の期限確認です。医薬品の使用期限が迫っていないか?ほとんど使われなくなったのに配置薬になっているものがないか?逆に請求頻度が多いのに配置薬になっていないものがないか確認しましょう。この辺りは実際に取り扱う看護師さんに確認するのもいいと思います。配置薬の改善は病棟の業務負担減少や不動在庫を防ぐことができるので病院経営にも改善をもたらします。

また、逆に超緊急時に使用する薬剤については使用実績がなくても配置する必要があります。使用目的を知らない人(主に薬局の上司)から数字だけ見て配置薬から除かれないようにしっかり使用目的を把握しておきましょう。

配置薬を手前からとっていき、手前に補充する。これを繰り返すと手前の薬剤だけ更新され、奥に使用期限が迫った薬剤が残されないように定期的に奥の薬を手前に出しておくと良いですね。結構、あるあるなので配置薬の確認の時は見ておきましょう。

カンファレンス

カンファレンスの頻度は鋲つおによって異なります。救急・集中治療室でなど患者さんの状況の変化が激しい病棟の場合は毎日行われます。一方、多くの病棟では週1回の頻度で行われることが多い印象です。曜日が固定の場合、その曜日はカンファレンスを中心に業務を組み立てる必要があります。

カンファレンスで確認することは時間や場所以外に、どんな情報が求められるかを確認しましょう。そして、カンファレンスまでにしっかり準備して臨むようにしましょう。

一方で、参加しているが質問や介入がない場合は撤退も検討しましょう。仕事の時間は有限です。なんとなくで時間を消費しないようにしましょう。もちろん撤退は上長に確認のうえで行いましょう。

実際にコロナ禍の際に不要なカンファレンスが廃止、または他職種の参加が取りやめになりました。現在は解除されましたが、皮肉にも開催や多職種の参加がなくても問題ないものを見直す機会になりました。

年単位の業務

最後に年に数回ある業務です。主に勉強会や院内の発表会です。主に時期と内容の確認をするのが同じですが、可能な限り異動した年に行うようにしましょう。多くのスタッフに自分を知ってもらうチャンスです。

勉強会

病棟で依頼される勉強会があれば積極的に参加、できれば開催側になりましょう。勉強会を行う際は5W1Hを意識して確認し、特にWhy(目的)を意識した内容にしましょう。

勉強会での発表は自分を知ってもらうチャンスです。機会があれば異動者が積極的に行うようにしましょう。自分も移動してきた後輩にはどんどん振っています。

病棟での勉強会もコロナ禍でだいぶなくなりました。要不要を見直すのももちろん大事ですが、コニュニケーションチュールとしての役割もあるので再開も検討していきたいですね。

まとめ

業務に関する引き付き内容は以上です。

業務内容
  • 毎日の業務:持参薬確認、処方監査・確認、問い合わせ、管理薬の確認、実務実習
  • 月単位の業務:配置薬の確認、カンファレンスへの参加
  • 年間の業務:勉強会の実施

繰り返しになりますが、特に毎日の業務は行う時間や完了に期限のあるものを優先して完了させていく必要があります。1日のタイムスケジュールをイメージしながら引き継ぎをしていきましょう。また、週・月、年単位の仕事は継続のぜひについても検討し、業務の最適化ができるようにしたいですね。

人間関係

次は人間関係の引き継ぎ、チームメンバーや他職種、その関わり方に関する引き継ぎです。業務をスムーズに進めるためにも人間関係についてもしっかり引き継ぎ、良い関係をも引き継げるようにしましょう。

業務内容
  • 薬剤師(グループ編成、連絡方法、シフト管理)
  • 医師(指揮系統、連絡方法)
  • 看護師(指揮系統、依頼される業務)
  • 事務(お願いできること)

薬剤師

複数の病棟を数人の薬剤師がグループを組んで担当する場合、1つの病棟を2名以上の薬剤師でローテーションを組んで行う場合、グループ内のルールの確認が必要です。

グループ編成

数人の薬剤師でグループを編成している場合、グループの責任者や自分の立ち位置を確認しましょう。グループの責任者は業務進行の遅れや病棟でのトラブル相談先になります。報告・連絡・相談が遅れないようにしましょう。また、自分より後輩、特に新人がいる場合、グループ内で育成しなければいけません。後輩の成長はグループ全体での業務スピードの上昇に関わるため重要な課題になります。

連絡方法

グループ内の連絡方法を確認しましょう。特に今後一貫して主張しますが、電話は緊急で重要なこと以外は使わないことがおすすめです

電話は相手の時間を奪う行為です。緊急・重要な内容以外は使わずに済む方法を考えましょう。

私のおすすめはグループチャットです。職場でGoogleを使っている場合はGoogle chatがおすすめです。チャットは見れる時に見ることができますし、議事録としての役割もあります。後で、言った言わないのトラブルを未然に防ぐこと、タスクの共有もできるのできるためおすすめです。

また、業務の引き継ぎ方法も共有しておきましょう。特に自分が休暇を取る時の病棟の状況について何を共有するか決めておきましょう。

私が休みの時に伝えることは以下の3つです。抗がん剤治療中の患者、不在時にTDMが必要な患者、ここ数日で頻繁に問い合わせを受ける内容の3つです。ハイリスク、他職種からの連携が必要なことは必須です。しかし、それ以外はその場でも対応が可能なので引き継ぎの準備やそれ自体の時間を節約するために行わないようにしましょう。

シフト管理

休暇のルールの確認、休暇申請の締切はきちんと確認しましょう。共有するのはこれくらいです。

医師

次は医師とのコミュニケーション方法を確認しましょう。特に病棟業務の根幹となる疑義照会や処方提案、問い合わせの方法にも関わる部分です。

指揮系統

まずは医師の指揮系統を確認しましょう。患者に関することを問い合わせたい時に、連絡先が主治医なのか同じ班、グループ内のメンバーなら誰でも良いのか、外科の場合には病棟で一括で連絡を受けている医師がいる場合など様々です。これは病院や診療科、場合によっては班ごとによって異なるので確認・共有が必要です。

連絡方法

次に連絡方法です。超緊急の場合は電話ですが、前述した通り可能な限り避けたいです。そのため、医師との連絡をどうしているか確認日せおきましょう。多い方法はカルテの記載や院内チャット、電子カルテの掲示板などです。緊急度によって使い分けましょう。

注意が必要な点は「連絡」と「カルテへの記録」がイコールでない場合、別途カルテ記載(〜について問い合わせを実施、確認したなど)を行うことが望ましいです。一方で、カルテを掲示板のように利用するのも視認性の面から避けたいですね。情報共有と記録は別で考えましょう。

看護師

看護師さんは常に病棟におり、病棟で勤務する薬剤師と1番距離が近く頼りになる存在です。一方で人数も多く、情報共有が困難な場合があります。共有方法や必須の内容を共有しておきましょう。

指揮系統

看護師さんは病棟にいる人数も多く、組織図と役割を理解することが重要です。患者さんの担当、病室ごとの責任者、勤務体の責任者(リーダー)、病棟の責任者(師長など)がいます。

特に気にすべき、共有すべき内容は「誰にどの情報を共有するか?」です。どの職種に対してでも同じですが、1対多数の情報共有になりがちなので確認が必要です。持参薬の内容、患者さんからの希望・うたえ、医師への確認中の内容、薬局からのお知らせなど内容によって伝える相手が異なる病棟もあるので間違えないように気をつけましょう。

私の勤務する病棟では基本的に勤務体のリーダーに情報を一括で伝えて、リーダーが各担当者に情報を共有しています。また、共有いた内容はカルテへの記載も行います。担当者間の情報共有がうまくいかない場合に何度も同じ問い合わせを受けることを避けるためです。互いの時間を尊重し合うためにも記録は必ず残しましょう。

依頼される業務

看護師に限ったことではないですが、薬剤師(薬局)への業務の依頼やタスクシフトは看護師さんからの依頼の頻度が高いのでここで紹介します。

基本的な考え方は「その場で返事をせずに持ち帰る」です。特に異動直後の薬剤師は狙われます。また、サービス感覚や頼りにしてもらいたくて安易に引き受けると部署の業務が増えてしまうので内容は吟味する必要があります。

是非も含めて、その場での回答を避けて持ち帰る→上司に相談する→返信は師長(責任者)に行うことを手亭して不要なトラブルを防ぎましょう。

病棟に薬剤師が1名しか配置されていない場合、その薬剤師の意見=薬局の意見、考え方と判断される可能性は常に意識して行動しましょう。

本当に部署としてお願いしたいことは責任者同士での議論が必須です。この考え方はきちんと頭に入れておきましょう。そうでない場合は部署ではなく、個人からのお願いと考えましょう。

事務

大きな病院では各病棟に事務の方がいることがあります。私の勤務先にも各病棟に事務さんがいます。引き継ぎで共有することは頼める仕事とお願いする方法です。また、書類のスキャンや印鑑をお願いした際の原本の返却方法も確認しておきましょう。

診療報酬加算

業務、人間関係の共有、引き継ぎが終わったら最後に”お金”についてです。病棟業務で診療報酬の中心になる「薬剤管理指導料1、2」です。

薬剤管理指導料1、2
  • 週1回、月4回まで算定が可能
  • 特に管理が必要な薬剤の場合は380点、それ以外の薬剤の場合は325点
  • 他にも麻薬管理指導加算の90点など

基本的に病院の薬剤師が取得できる主な収入源です。これをきちんと取得することが病棟で勤務する薬剤師にとって必須になります。仮に100件/月取得しても38万円です。一人分の薬剤師の給与にしかならないことを意識しましょう。

前任の担当者や同じ病棟を担当するグループ内で目標件数や昨年度の算定実績を共有して、件数の増加を目指しましょう。移動した直後でもここはしっかり業務として取り組み算定件数を落とすことがないようにしましょう。

共有事項は取得しやすい疾患(手術、検査)や記録のテンプレート、算定のタイミング、特に380点の取り忘れの無いようにしましょう。基本的には算定の守れがないような仕組みかをしていきましょう。

また、実際に算定した内容はきちんと記録し実績として上司にアピールしましょう。特に算定数の増加に貢献できた取り組みなどの改善案は他の病棟でも採用できれば病院全体の収益増加にも貢献することができます。昇進や賞与にもつながる可能性もあるためしっかりアピールしましょう。

まとめ

今回は初めての病棟の引き継ぎを受ける/する方に向けて必ず確認しておきたい情報をまとめました。

引き継ぎで確認すべき3つの項目
  • 業務(毎日、毎月、年数回)
  • 人間関係(薬剤師、医師、看護師、事務)
  • 加算(年間目標、ノルマ)

引き継ぎ相手から正確な情報がない場合も自分から確認していけるように準備して取り組みましょう。気棺が不十分で悲しい思いをするのはいつも引き継がれた方です。

みなさんの新しい環境でのご活躍をお祈りします。これからも一緒に頑張りましょう。

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