病院薬剤師となってはじめにすべきことはなんでしょうか?新薬剤師の皆様初めまして。自分は「ダイナ」と申します。普段は病院薬剤師として勤務するかたわら、ブログやSNSで新人・若手薬剤師向けに情報発信をしています。
これから病院薬剤師になるにあたり、はじめに何をすれば良いか戸惑っている方もいるかと思います。自分が勧める「はじめに入会を検討したい学会」は「日本病院薬剤師会」と「日本医療薬学会」の2つです。
「今後も病院で勤務する予定」「病院薬剤師としてキャリアを積みたい」「認定を取得して専門分野で活躍したい」と考えるのであれば早いうちから今後の目標やキャリアプランを考えて行動に移しましょう。
今回紹介する学会は「日本医療薬学会」です。
いずれも、今後も病院薬剤師として勤務し、特に認定、専門薬剤師を取得することを考えている新人、若手薬剤師のみなさんにはほぼ必須の学会になります。その理由は「専門薬剤師を取得するのに5年間の学会員の期間が必要」だからです。
医療薬学会の認定には研修施設の認定に必要なものもあります。薬局長に必須ではないですが、大学病院や大きな病院では必要になる可能性もあります。また、がん領域でがん専門薬剤師、指導薬剤師を目指している方も可能な限り早く入会することをお勧めします。病院によっては入会が必須となっている施設もありますが、一方で誰も教えてくれなかったということもあります。この記事を読んで必要と感じた方はすぐに入会までしなくとも、周りの先輩に相談したり、自分で調べて見ることを勧めます。
この記事があなたのキャリア形成の参考になれば幸いです。
日本医療薬学会
まず、日本医療薬学会(以下、医療薬)の紹介です。医療薬は日本病院薬学会として設立し、2001年から医療薬に変わりました。比較的設立からの日が浅い学会になります。主に学会や研修会の開催や学術雑誌の発刊、専門薬剤師の認定の他にも、助成金の交付なども行っています。また、病院薬剤師の学会ではなく、薬局の薬剤師さんも多く所属し、専門薬剤師の取得や学会発表をされています。
もちろん自分も入会しています。
学会の規模は大きく、会員数が約1.4万人、毎年行われる年会の参加数は1万人です。薬剤師が所属する学会では大きい部類です。
入会と年会費
入会は学会ホームページから手続きができます。必要事項を入力し、年会費を納めれば晴れて学会員になれます。
会費は正会員は9,500円、学生会員は2,000円です。なお、社会人大学院(病院、薬局で働きながら大学院に所属)の方は正会員での入会になります。間違えないようにしましょう(おそらく注意されます)。
医療薬入会のメリット
日病薬に入会して受けられる特典には次のものがあります。
得られる特典について解説します。
学術大会、講習会の参加費の割引
医療薬では毎年年会が開催されます。また、定期的に勉強会が開催されます。各種専門薬剤師になるための講習会が開催されます。各専門薬剤師の症例報告の書き方や各領域を基本から学ぶことができる内容のものもあるのでホームページを確認して見るのも良いでしょう。
学会には毎年参加するようにしています。日本中の薬剤師さんが集まるお祭りみたいなところです。
年会の参加費は非会員は18,000円のところ、学会員であれば10,000円で参加できます(事前登録の場合)。また、各種勉強会の参加費も割引されるので活用しましょう。いずれも参加登録の時に会員番号を入力するだけで大丈夫です(会員番号を忘れないようにしましょう)。
年会で発表できる
医療薬に入会すると、年会で発表ができる権利が発生します。学会での発表は専門、指導薬剤師の取得に必須なのでチャンスがあればどんどん挑戦しましょう。しかし、演題の締切が4−5月と早いので事前に準備しておきましょう。
ポスター発表には査読(発表の可否を決める判断)が入りますが、毎年演題が足りず、期間延長しているので体裁がしっかりしていれば問題ないと思います。日本病院薬剤師会の地方会とあわせて初心者が初挑戦するのにおすすめの学会の一つです。
学会誌への投稿
医療薬の会員であれば、学会誌「医療薬学」の購読、投稿が可能になります。医療薬学は日本語での投稿が可能です。また、雑誌への投稿は症例報告でも査読者がきちんと論文を評価、コメントをしてくれます。査読者は医療薬学会に所属するその領域を専門とする薬剤師さんが担当します。その方とのやりとりを通して論文投稿について多くを学ぶことができるのでおすすめです。
また、薬学雑誌である必要はありませんが、専門薬剤師の取得には2報の論文の投稿が必須になります。もちろん全て筆頭著者である必要はありませんが、指導薬剤師を目指す方は計画的に進めていきましょう。
論文作成は初めのうちは最低でも1報に1年かかりました。2報出すのは大変です。
学会での発表もそうですが、せっかく年会費を払って学会に入るのであれば一度は発表、投稿に挑戦してみましょう。
代議員の選挙権および被選挙権が得られる
新人薬剤師さんには直接関わることは少ないと思いますが紹介します。医療薬学会では代議員の選挙があります。学会員ごとに数人の代議員選挙での投票権があります。この選挙はみなさんの会費をどうやって使うかも含めて医療薬の運営を決定します。選挙にはきちんと参加し、清き一票を入れましょう。
自分は強い思いや実績のある人に投票しています。
もちろん選挙なので、誰が誰に投票したかはわからないようになっています。各病院の薬局長や管理職の方に投票しないといけないことはもちろんありません。自分が誰なら安心して代議員を任せられるか判断して投票しましょう。
日病薬の認定・専門の取得
今回の本題はこれから解説する医療薬の医療薬学専門薬剤師および指導薬剤師の取得についてです。これから病院薬剤師として勤務する方にとって専門、指導薬剤師のことは知っておきましょう。また、将来を含めて取得を考える場合はどこで働くかも重要になるので、自分の現状についてはきちんと確認しておきましょう。
医療薬の専門、指導薬剤師には、医療薬学専門・指導、薬物治療専門・指導、地域薬学ケア専門薬剤師などのジェネラリストを目指す方向けの専門があります。また、がん領域のスペシャリストのがん専門・指導薬剤師があります。
それぞれ取得するための方法は異なりますが、今回は医療薬学専門薬剤師を例に解説します。医療薬学専門薬剤師の取得のために必要な用件は以下の通りです。
多いですね(笑)。重要なものから順番に説明していきます。
薬剤師および学会員の期間について
今回1番確認しておきたいことがこの薬剤師歴5年以上と学会員歴が5年以上という部分です。薬剤師歴5年以上は一定の薬剤師としての経験が必要な時間です。そのため、最低5年間待たないといけない一方、自然に用件を満たすことができます。しかし、学会員として5年間在籍することを知らないとずっと条件を満たすことができません。
自分も知らずに学会に入るのが遅れてしまった一人です。みなさんは絶対後悔しないでください。
将来的に病院で働き続けようと考えている人であれば取得を目指してもよい専門だと思いますので検討している人はすぐに入会しましょう。後述する条件と合わせて自力ではどうにもできない条件の一つです。
ベースとなる認定が必要
医療薬学専門薬剤師の取得にはベースとなる認定が必要です。現在1番おすすめできるのは日本病院薬剤師会の日本病院薬学会認定薬剤師です。最短で3年で取得できるのと、医療薬の専門取得のための学会参加などで単位を取得できる点です。日本病院薬剤師認定薬剤師の取得方法についてはこちらの記事をご確認ください。
認定施設での業務または研修の実施
専門薬剤師の申請をするためにはあらかじめ認定を受けた施設で業務または研修を受ける必要があります。そのため、自身の勤める病院がこの研修施設に該当するかはあらかじめ確認しておく必要があります。研修施設の用件ですが、施設に今回紹介している医療薬学専門薬剤師の上位に当たる指導薬剤師が1名以上在籍していることが必須になります。
自分の勤める施設が認定施設に該当するか、または認定施設への異動または研修に行ける制度があるかを確認しましょう。
自分の施設は認定施設でないため、取得には系列病院への異動か転職が必要な状態です。
必要な単位の取得
医療薬学専門薬剤師の申請には50単位の取得が必要です。そう聞くと先は長そうですがご安心ください。他の項目で必要な日本薬学会への参加で10単位/日、発表で5単位/日、薬物療法集中講義の受講で15単位/回、論文投稿で10単位(邦文)または20単位(英文)を満たせばほとんどクリアしたようなものです
年会、講習会への参加
年会や講習会への参加は各1回ずつ必要になります。年会では発表も合わせて行うことも検討しましょう。最近はオンラインでの参加も可能ですので、自宅にいながらでも必要な単位の取得や学習が可能になりました。
症例報告10件の提出
薬剤師としての臨床での能力を示す症例報告を10報提出する必要があります。もちろん、論文ではなく、規定のフォーマットに必要事項を記載するので十分です。自身が実際に介入した症例はしっかりメモしておき、介入報告を作成できるようにしましょう。
介入の程度ですが、疑義照会ではなく臨床的な観点での治療薬の追加や中止、増減の提案であれば十分な場合が多いです。身近に経験者がいればどのような症例が使用できるか聞いておくのも良いと思います。
また、医療薬学会では定期的に年会や講習会で症例報告のまとめ方についての解説が行われるので、一度は参加してみるのもおすすめです
症例報告についてはこちらの記事をご参考にしてください。基本的な書き方や見直しポイントをまとめてみました。
論文投稿と学会での発表
専門薬剤師の取得で1番ハードルに感じるのがこの論文の投稿2報と学会での発表2回です。
完全に個人の考えですが紹介します。まずは学会での発表から挑戦してみましょう。テーマは症例報告でも職場での新しい取り組みのデータの集計から始めるのでも十分だと思います。もし、自分でテーマを見つけられない場合は発表を予定している先輩に相談して、共著での発表から目指しましょう。
次に論文化ですが、学会で発表した内容を論文化に挑戦しましょう。学会での発表(ポスター、口頭ともに)では聴講者からの質問が得られます。その質問の回答を参考に論文作成をしてみましょう。また、すでに論文投稿の経験のある先輩に相談してみましょう。
いずれの場合も自ら率先して経験者に相談して、発表や論文作成に挑戦してみましょう。
専門薬剤師認定試験に合格
最後に申請後に専門薬剤師の認定試験に合格しないといけません。試験範囲の確認や勉強には専用のテキストがあるので取得を考えた段階で購入して準備する必要があります。
実際に受験して合格された方のお話ですが、幅広い領域の疾患や薬剤の知識が要求されるので、しっかりと勉強して試験に挑む必要があると言われました。
自分もテキストは購入して準備をしています。幅広い分野の領域の知識を無くさないように国家試験の問題を毎年解くようにしています。
まとめ
今回は医療薬学会と医療薬学専門薬剤師について紹介しました。病院薬剤師としてキャリアを作っていく方はぜひ考えてみてください。医療薬学会の専門薬剤師の申請には学会への5年以上の在籍が必要です。
薬剤師が臨床現場の最前線で活躍できるのは最長で15年(25歳~40歳を想定)くらいです。その間に自分を磨き上げ、後進を育てるとなると時間は必要です。そのためには、いち早く認定を取得する必要があると思います。
後になってもっと早く準備しておけばよかったと後悔しないように、必要な準備は早く始めておきましょう。
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