論文を検索する時「自分の疑問を解決できる論文があるのか知りたい」「論文がうまく検索できない」「PubMedでの論文の探しかたがわからない」などの悩みを持ったことのある先生方も多いと思います。
自分は大学院を卒業し博士(薬学)を取得。大学病院に10年勤務し様々な病棟での業務経験と症例報告をした経験があります。
今回は自分が後輩からの「PubMedを使った論文の検索方法について知りたい」という疑問から、初めに覚えたいPubMedの使い方をまとめました。
この記事を読むことで、PubMedを使った論文の検索方法がわかり、毎日の病棟業務での疑問や症例報告作成のために必要な参考文献の探しかたについて学ぶことができます。
PubMedはGoogleなどと同様に調べたいキーワードを入力して検索することができます。その際に「MeSH」の使い方をマスターすることで、網羅的な論文検索や絞り込みが可能になります。コツをしっかり押さえて臨床、研究に活かしましょう
論文検索に用いる検索エンジンについて
学術論文の検索には二次資料を用いるのが効率的です。資料には3種類あります。原著論文が一次資料、教科書などが三次資料に当たります。今回紹介する、論文検索に用いるのが検索エンジン=二次資料になります。
代表的な二次資料には以下のようなものがあります。
論文を検索するための検索エンジンの一つにPubMedがあります。
今回は二次資料の中で、最もよく使用されるPubMedの使い方について紹介します。
PubMed(Medline)は無料で使える論文検索エンジン
PubMedは無料で世界中の雑誌の論文が検索できます。NLM(米国国立図書館)が管理し、世界70か国、約5,000誌以上の雑誌の検索が可能です。
また、施設の契約状況にもよりますが、論文のPDFの入手も可能です。また、常に収載されている論文数は日々更新されています。
2,000万以上の論文が検索できる検索エンジンが無料に使えるのはすごいね
それでは、PubMedの使い方について紹介します。下にリンクを貼っておくので、見ながら操作してみましょう。
PubMedの操作方法はGoogleとほぼ同じ
PubMedを使った論文検索は以下の手順で行います。
1:検索キーワードの準備
はじめに検索したいキーワードを準備します。キーワードには「疾患名」や「薬剤名」、「副作用名」などが該当すると思います。調べたい内容の単語をあげてもらえれば大丈夫です。
しかし、キーワードは英語で入力する必要があります。検索に使用できるオンラインの辞書を紹介します。おすすめはライフサイエンス辞書です。医学系の英単語の検索はこれがあれば網羅できます。ブックマークしておくのがおすすめです。下にリンクを貼っておきます。
2:検索
検索の方法は①検索したいキーワードを入力して、②「search」を押せば完了です。
検索バーの下には、該当する論文数を見ることができます。また、検索結果の左側には検索に該当する論文数の年別の推移が表示されています。ここから、そのキーワードの注目度や検索結果の変化を見ることもできます。
また、検索結果の並び順ですが、新しい順に変更することをお勧めします。理由は最新の論文には過去の重要な論文が引用されているので、背景などからまとめて情報を得る際に便利だからです。
論文検索の時はある程度まで絞り込んだら全てに目を通すので、最新の背景がわかると読みやすくなります。
次に、論文を一つ一つ見てみましょう。ここでは、論文の出版雑誌や掲載された年、巻、号、ページ数が載っています。論文の参考文献を記載する際に便利なので覚えておくと良いです。そして、PMIDが記載されています。PMIDは、Pubmedで検索できる論文に付けられた通し番号です。この番号だけでも論文を検索することができます。論文を調べた時にメモしておくと便利です。
3:フィルター機能による絞り込み
最後にフィルター機能を使って論文を絞り込みます。キーワードから抽出した論文のみでは数が多すぎて確認するのは困難です。そこで、フィルター機能を使って絞り込みを行います。検索結果画面の左側にチェックボックスがあります。ここにチェックを入れると、フィルターをかけることができます。例えば、図で示したように症例報告のみに絞り込むことも可能です。また、選択肢にないフィルターは下にある「Additional filter」で追加できます。
フィルター機能は絞り込みを行う上で便利ですが、注意も必要です。絞り込みをしすぎて逆に欲しい論文が検索できない場合があります。例えば、症例報告(Case reports)のみに絞りこみを行うと、そこには分類されていない症例報告(LetterやShort reportsなど)は検索できなくなる可能性もあります。この辺りは実際に検索をしてみないとわかりません。絞り込んだ結果、数が少ない場合は絞り込みなしで確認することも必要です。
MeSHによる網羅的な検索
MeSHとはPubMedでの統制語句
MeSHはPubMedにおける統制語句=言葉の定義のことです。例えば、皆様は下の写真の食べ物をなんと呼びますか?
今川焼きかな?
自分は大判焼きと呼びます。
実際に今川焼き、大判焼き、回転焼きなど多くの名前で呼ばれています。Googleはとても優秀な検索エンジンなので、「今川焼き」と検索しても大判焼きや回転焼きなど他の呼び方の物も一緒に検索してくれます。しかし、PubMedでは同じようにはできません。「今川焼き」と検索すると、「大判焼き」の論文(ありませんが)は検索できません。また、たまたま要旨に「今川焼き」の文字が入っている全く関連のない論文や「月刊今川焼き」などの雑誌名、「今川焼き博士」の書いた論文は検索されてしまいます。このような事態を防ぐために統制語句を使う必要があります。
MeSHの使い方
初めに、「MeSH Database」を選択します。
そして、左のタブから「MeSH」を選択肢、キーワードを入力し、「Searc」hをクリックします。
すると下のような画面になります。次に言葉の定義(例ではAspirin)を確認します。そして、タブにチェックを入れ、「add to search builder」をクリック、「Search PubMed」をクリックするとMeSHで「Aspirin」とタグ付けされた論文のみになります。図ではMeSHをかけることにより「Aspirin」について論じていない論文が除かれ論文数が少なくなりました。
さらに、MeSHを選択するときに、より細かい分類での選択も可能です。例えば、症例報告では、有害事象(adverse effects)などに絞って検索すると「Aspirin」による「adverse effects」の論文のみにしぼって検索することも可能です。
Advancedによる複数のキーワード検索
実際の検索の例を示します。タクロリムス(Tacrolimus)とアジスロマイシン(Azithromycin)の相互作用の症例報告を検索してみます。それぞれをMeSHを用いて絞り込みましたが、両方のキーワードを持つ論文に絞り込みたいと思います。
タクロリムス(Tacrolimus)とアジスロマイシン(Azithromycin)の両方を含む論文のみを検索する方法を紹介します。
初めに検索したいキーワードを一つずつ検索します。次に、トップ画面の「Advanced」を選択します。すると、これまでの検索履歴を見ることができます。そこで、「Actions」から「Add query」を選びます。次に、「Actions」から「Add with AND」を選択します。最後に「Search」をクリックするとタクロリムス(Tacrolimus)とアジスロマイシン(Azithromycin)の両方を含む論文のみを検索することができます。
このように複数のキーワードの論文を検索できます。この後にフィルター機能による絞り込みを行うことも可能です。
英語論文検索で使える便利なサイト2選
英語論文を検索する場合、キーワードを英語で設定し、検索した英語論文の内容を確認することが必要です。
自分は英語が苦手だから、オンラインで使える便利なサイトを使っています。
今回は英語論文の検索に使える便利なサイトを2つ紹介します。ぜひブックマークに登録しておきましょう。
ライフサイエンス辞書
ライフサイエンス辞書は医学系の英単語の検索はこれがあれば網羅できます。医薬品名や病名についても検索することができるので、論文検索には必須になります。
DeepL翻訳
DeepL翻訳は高性能な翻訳サイトです。ライフサイエンス辞書は単語の検索のみ対応です。一方、DeepL翻訳は文章の翻訳やPDFファイルを丸ごと翻訳することも可能です。
また、日本語から英語に直すことも可能ですので、英語の論文作成にも役立ちます。
まとめ
論文検索は毎日の臨床で生じた疑問の解決や論文作成に必要なスキルです。特にPubMedを使用する機会は多いと思います。しっかりと使い方を確認して、必要な論文検索ができることを目指しましょう。
また、症例報告の検索は認定、専門の症例報告に使用することも出来ます。症例報告の作成についてはこの記事をご参照ください。
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