みなさんは「認定、専門薬剤師」をお持ちですか?「興味はあるけれど、どんなものがあるのかわからない」「実際に取得している」「これから取得しようと勉強中」「将来取得したいと考えている」様々な意見があると思います。しかし、今回は視点を変えて考えてみましょう。
テーマはズバリ「認定、専門薬剤師を取ることは自己投資なのか?」
自分は実際に認定薬剤師をいくつか取得しました。そして、現在も認定を活かして業務や後進が同じ認定を取得するための指導に取り組んでいます。
認定、専門薬剤師は特定の領域で一定のレベルに到達した証であり、周囲からの評価や信頼に繋がると思います。また、組織を活性化させたり、病院や施設の基準を満たすことで算定の増加に寄与することもできます。
しかし、個人とすればいかがでしょうか?資格を取得したことで昇給や手当はつきましたか?認定、専門を取得、維持のために使った費用と認定、資格により得られた金額は大きいですか?もちろん、お金が全ての指標ではありませんが今回はあえてお金に焦点を当てて考えてみたいと思います。
この記事では、認定、専門薬剤師の実態とお金に焦点を当てた内容を紹介します。これから認定、専門を取る方や、これから更新がある薬剤師さんは「本当に必要なのか」「自分に本当に必要な資格なのか」を考える機会になれば幸いです。
認定、専門薬剤師制度とは
認定、専門薬剤師制度は学会や研究会が独自の基準を設け、一定の基準や条件を満たした薬剤師に認定を与える制度です。
代表的なのはがんや感染、緩和などがありますね
代表的な認定には以下のようなものがあります。
これらの認定や専門を持っていることは他の薬剤師との差別化や専門性の強化、希望の病棟への配属など面でも有利に働くと思います。
その、認定や専門を取得するためには必要なものがあるので紹介します。
薬剤師としての業務経験
いずれの資格も1年目の薬剤師がいきなり取得できるものではありません。多くの資格は取得するまでに3ー5年の業務経験が必要になります。また、その期間内で特定の領域での業務経験が必要になります。
その期間に必要なものを準備しましょう
そしてその際に気をつけないといけないことが、業務を行う施設です。認定、専門薬剤師の中には、「特定の」施設での研修が必須となっているものもあります。
勤務する施設が特定の施設に該当すれば問題ありません。しかし、そうでなかった場合は他施設に研修にいく必要があります。その期間は有給を利用するのか?出張扱いになるのか?それも施設によるので、取りたい認定がある場合は、就職する施設が研修に必要な特定の施設に該当するか?該当する施設への研修制度があるのか、きちんと確認しましょう。
症例の集積
認定、専門を取得するためには専門的な知識を実際に使って患者さんに貢献できたかを確認されます。そのためには、自身の介入を症例報告にまとめて提出する必要があります。症例の質や件数は認定、専門によります。しかし、いずれも長い期間をかけて準備する必要があります。
がん専門薬剤師では50症例、1人の患者さんに2つ以上の介入が必要になるそうです。
この症例の集積についての参考書は少ないので、経験者に聞くが近くにいない場合は経験者のブログやnoteなどの資料を読むことも必要かもしれません。認定によってはnoteの有料記事やKindle書籍もあるようなので実績のある方で、高額でもなければ検討もありだと思います。
自分も抗菌化学療法認定薬剤師を取得するためのロードマップを作っていますので宜しければご覧ください。もちろん、ブログなので無料です。
学会、研修会の参加
認定、専門を取得するためには認定元の学会への参加や研修会への参加が必要になります。また、学会での発表が必須となるものもあります。学会で発表するためには日本ではその学会への所属が必要な場合が多いです。
すると、その入会金、年会費、講習会参加費そして、学会の参加費や宿泊費、交通費が必要になります。おそらく、ここが1番費用が必要な部分です。
他にも認定、専門によっては他にも要件が必要な場合もあるので、自分が興味のある認定や専門で必要なものについては事前に必ず調べておくようにしましょう。
必要条件を満たせずに1年延期とならないように気をつけましょう
認定、専門取得に必要な費用
認定や専門薬剤師を取得するために必要な費用を考えてみましょう。まず先ほど紹介した1番お金がかかると思われる学会の参加、発表の費用を紹介します。
一般的な費用は以下の通りです。
ここが1番費用がかかる箇所になると思います。最近はオンラインの講習会や学会参加も可能なので、宿泊費や交通費を節約することもできるようになりました。
また、年会費は毎年かかりますし、講習会や学会への参加、発表の回数は認定、専門によって大きく異なります。さらに更新も考慮すると、自分の取得経験のある抗菌化学療法認定薬剤師では取得または更新で10万円ほどかかる計算です。
さらに、新規取得や更新のごとに審査料と認定または更新料が発生します。場合によっては筆記試験と面接試験が別に費用がかかることもありました。
大体このくらいかかるイメージは持っておく必要があると思います。
ここからが今回の記事で1番強調したいところですが、認定、専門資格を自己投資と考える場合、この取得と維持にかかる費用を回収できるかを考えて見る必要があります。そして、可能であれば収入を増やすことができるか考えてみましょう。
認定、専門を取得することで得られる収益
費用の次に得られる収入を考えてみます。
昇給、手当の取得
まずは給与面での収入増加が可能か検証したいと思います。残念ながら、公式の資料がなかったのでフォロワー数4,900人超のX(旧Twitter)のアカウント運営者であることを活かしてアンケートをとりました。
その結果、半分以上の施設で認定、専門の取得による昇給や賞与がないことがわかりました。もちろん、様々なバイアスがあるとは思いますが、一つのデータとしてみてもらえればと思います。
認定や専門は病院や薬局の加算や施設基準を満たすために必要な場合や収益増加に関わるものもあります。また、専門性の高い薬剤師が在籍していることを開示して職員の募集に一役買っている場合もあります。しかし、本人の給与に反映されていない場合が多いということは覚えておきましょう。
ちなみに自分の施設は特に優遇はなく、持ち出しです(通常の出張費のみです)。
昇給がある一例を紹介します。日本調剤では認定取得者には昇給があるようです。
薬局や別施設に転職を検討する場合は、事前に需要のある資格を確認しておくことも十七日もしれません。
認定や専門が転職に有利に働く可能性も十分に考えられます。そのため、もっと自分の専門性を活かしたいと考えた方は転職も検討してみましょう。
ファルマスタッフは日本調剤が運営している転職会社です。規模も大きく、自身の希望となる就職先を探す上でよい助けとなると思います。
また、比較的最近新しい転職サイトのセルワーク薬剤師もおすすめです。WEB 経由にて無料相談申込後なら、電話だけでなく、メールでの本人確認でも登録手続きが完了できます。紹介できる雇用形態は正社員ですが、業界最多の求人数のため利用する勝ちはあると思います。
書籍の執筆、公演依頼など
専門書籍や雑誌の執筆、企業主催の勉強会での公演で印税やお礼金がもらえることがあります。費用はまちまちですが、自分の経験では相場は次の通りです。
いずれも大きな収入になることは確かですが、取得すれば必ず依頼がもらえることはありません。そのため、依頼があれば受けるくらいのスタンスでいる方が良いと思います。
自ら情報発信する
専門的な知識や経験を広く普及したり、認定、専門を目指す方への指導を行うことで収益化することも可能です。もちろん誰でもできることではありませんが、情報発信者になることで収入を得ることも可能です。現在では、noteやココナラなどのコンテンツを利用すれば誰でも初期費用なしに始めることも可能です。
自分はブログとSNSで手いっぱいなので、今の所考えていません。
結論
今回の記事の結論としては「認定や資格取得が自己投資になるかについては働く場所と内容による」です。
もちろん、認定や専門薬剤師を取得することは患者さんの利益に繋がり、職場内外でも多くの縁を得ることはお金では表すことができない価値だと思います。また、自己満足は決して悪いこととは考えません。仕事を行う上で満足度をあげることは重要だと考えます。
自分も認定を持っていて後悔したことはありません。
一方で、自己投資と考えるのであれば必ず、費用と収益を考える必要があります。取得にかかる費用<得られる収益であるか?そうするためにはどうすれば良いかを考えながら自分のキャリアプランを考える必要があります。
自分もこの考え方をしてある基準を持って認定を整理しました。その基準を最後に紹介します。
この基準を参考に自分は認定を整理しました。少なくとも4つ以上「はい」であれば自己投資として認定は取得も検討してよいと考えます。
まとめ
今回は認定、専門薬剤師は自己投資として成り立つかについて考えました。資格取得にかかる費用とそれにより得られる収益を考えることは非常に大切です。
また、それに関する自分の考えも紹介しました。
この記事が自分のキャリアプランを考える一助になれば幸いです。
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