病院薬剤師となってはじめにすべきことはなんでしょうか?新薬剤師の皆様初めまして。自分は「ダイナ」と申します。普段は病院薬剤師として勤務するかたわら、ブログやSNSで新人・若手薬剤師向けに情報発信をしています。
これから病院薬剤師になるにあたり、はじめに何をすれば良いか戸惑っている方もいるかと思います。自分が進める「はじめに入会を検討したい学会」は「日本病院薬剤師会」と「日本医療薬学会」の2つです。
「今後も病院で勤務する予定」「病院薬剤師としてキャリアを積みたい」「認定を取得して専門分野で活躍したい」と考えるのであれば早いうちから今後の目標やキャリアプランを考えて行動に移しましょう。
今回紹介する学会は「日本病院薬剤師会」です。
いずれも、今後も病院薬剤師として勤務し、特に認定、専門薬剤師を取得することを考えている新人、若手薬剤師のみなさんにはほぼ必須の学会になります。その理由は「認定、専門を取得するのに学会員の期間が必要」だからです。
病院によっては入会が必須となっている施設もありますが、一方で誰も教えてくれなかったということもあります。この記事を読んで必要と感じた方はすぐに入会までしなくとも、周りの先輩に相談したり、自分で調べて見ることを勧めます。
この記事があなたのキャリア形成の参考になれば幸いです。
日本病院薬剤師会とは
日本病院薬剤師会(以下、日病薬)は、病院や診療所などの医療機関に勤務する薬剤師の職能団体です。全国の47都道府県にもそれぞれ病院薬剤師会があり、その都道府県の病院薬剤師会の会員で構成されています。
そして、入会する場合は、「日本病院薬剤師会」と「各都道府県の日本病院薬剤師会」の両方に入会します。施設によっては必ず入会しないといけないところもあるので、きちんと確認しておきましょう。
入会と年会費
入会は各都道府県の日本病院薬剤師会から入会できます。入会届に必要事項を記載して、メールで提出すれば完了です。簡単ですね。
会費は日本病院薬剤師会が8,000円+各都道府県の日本病院薬剤師会は各都道府県で異なります。年会費は施設ごとに徴収してまとめて支払う場合と各自で支払う場合があるので忘れずに対応しましょう。
自分の施設は全員入会で会費はまとめて払っています。
郵便局での振り込みが大変です。
日本病院薬剤師会 会員の権利
日病薬に入会して受けられる特典には次のものがあります。
せっかく入会するなら、得られる特典もしっかり確認しよう
得られる特典について解説します。
学術大会、講習会の参加費の割引
日本病院薬剤師会では各地方ごとに学術大会が開かれます。また、定期的に勉強会が開催されています。会員であればそれらの参加費の割引を受けることができます。学術大会の参加費の割引(10,000円➡9,000円)、講習会の参加費の割引(1,000円➡500円)になります。
日病薬賠償責任保険制度への加入
次に日病薬賠償責任保険制度を紹介します。薬剤師として勤務する場合、万が一医療過誤で賠償金が必要になった時、その費用を補助してくれる制度です。
加入は施設単位と個人単位の2種類があり、個人単位で契約するとなんと、どの施設での事故についても保証してくれます。
もし、業務や副業等で他の施設で調剤することがあっても、この日病薬賠償責任保険制度に加入しておけば安心です。年会費も2400円をお手頃ですので、加入することをおすすめします。
学会での発表と雑誌への投稿
日病薬の会員であれば、学術大会での発表や日本病院薬剤師会雑誌の購読、投稿が可能になります。日病薬の学術大会は新人若手薬剤師さんが初めて発表する学会としてもおすすめです。演題登録で落とされることはほとんどありませんし、学会の準備から発表までの流れを学ぶことができます。
また、学術雑誌は日本語での投稿が可能です。雑誌への投稿は症例報告でも査読者がきちんと論文を評価、コメントをしてくれるのでやりとりを通して論文投稿について多くを学ぶことができます。
せっかく年会費を払って学会に入るのであれば一度は発表、投稿してみましょう。
日病薬の認定・専門の取得
今回の本題はこれから解説する日病薬の専門薬剤師の取得についてです。これから病院薬剤師として勤務する方にとって認定、専門は魅力的だと思います。しかし、いきなりこれらの資格を取得することができないので注意が必要です。
日病薬の認定・専門には、がん、感染制御、精神科、妊婦授乳婦、HIV感染症の認定・専門薬剤師の取得が可能です。しかし、いきなり各認定・専門は取れません。それらの認定・専門を取得するためにはベースに日病薬病院薬学認定が必要になります。また、他の学会の認定、特に、日本医療薬剤師会の医療薬学専門薬剤師を取得するためにも日病薬病院薬学認定などのベースとなる認定が必要になります。
せっかく、認定、専門を取得したいと準備をしてもこの認定がなければ取得までの時間が伸びてしまいますので注意しましょう。
それでは、認定取得の方法を見てみましょう。
日病薬病院薬学認定の取得要件
取得要件
日病薬病院薬学認定の取得要件は以下の通りです。
一見すると単位を取るところが難しそうですが、
コツがあるので安心してください。
では、一つずつ見ていきましょう。
まずは学会員であれば(1)はクリアできます。簡単ですね。
次の(2)が一番の課題です。50単位を各項目でのルールを守って取得する必要があります。(2)①に各項目での必要な点数が指定されています。具体例を挙げます。「Ⅰ-1~3の各項目の中から1項目以上履修し、合計2単位以上取得すること」であれば、1~3の項目のうち1項目選んで2単位取るまたは2項目選んで1単位ずつ取るこれで達成です。それ以上の点数をとっても構いませんし、この項目はここで止めても大丈夫です。
また、「Ⅲ-1~2の各項目を履修し、合計4単位以上取得すること」であれば1~2の項目のうち合計4点取ることに加えて、各項目で1単位以上取る必要があります。
このように単位を取ることに加えて、どの項目の単位を取るかも重要になります。学会や講習会、e-learningであればどの項目か記載してあるので必ず確認しましょう。
以前は学会では「項目なし」となっており、各項目のどれにも使えませんでした。しかし、コロナ禍でオンラインでの聴講がすすいました。学会の演題でも項目が割り当てられているので、特にオンラインで参加する場合は、足りない項目を重点的に聴講すればいいと思います。
また、単位取得で重要なことがあります。③の「年10点を取る」ことです。もし仮に3年目に10単位取れなかった場合は、初めからやり直しになります。
認定に必要な点数取得方法
点数の取得方法は主に2通りあります。
①学会、勉強会等への出席
②e-learningの受講
それぞれのメリット、デメリットがありますので見ていきましょう。
学会、勉強会への出席での取得
学会、勉強会への参加で点数を取得できます。目安となる相場は2時間で1点です。講習会であれば半日で2単位程もらえます。学会であれば開催時間分ですので、1日参加であれば3~4点が取得できます。学会によっては参加のみでシールが発行されるものもあるので交流やポスター発表を見るのに集中することもできます(シンポジウムなどは後でアーカイブで見れば問題ありません)。このように学会や講習会は一度に大量の単位を獲得することができる点がメリットです。
また、関東ブロック大会や医療薬学会の年会はオンライン参加が可能になり、各項目の点数も割り当てられているので非常におすすめの方法です。また、オンライン参加では現地に行く必要もないため、会場が遠い場合や泊まりでの参加ができない子育て世代にとっても嬉しい仕様になりました。一回の参加やオンラインの視聴で10単位以上取ることもできるので、勉強しながらしっかり単位を取得することもできます。
e-learningの受講
次にe-learningによる単位取得方法を紹介します。この方法は学会参加で点数が不足する場合の補助的に利用するのがおすすめです。このe-learningは日病薬が運営するオンライン講座です。内容は過去の講習会の録画放送です。費用は5,000円/年で、毎年6~7月くらいから開始され、3月末までの期間有効です。
e-learningの最大のメリットは項目ごとに単位が取れる点でした。現在は学会や講習会でも十分に必要な各項目の単位を取得できるので、自分は補助的に利用することをおすすめします。
試験
50単位と必要書類を提出したら試験を受けて(受験料:2,000円)完了です。試験方法は自宅のPCでのCBT形式です。問題は毎回違いますし、途中離脱できませんので、時間と環境を整えて挑みましょう。合格基準は受験者の成績上位10%の平均点の70%となっています。なお、合格率は90%を超えるそうですので、緊張せずに臨みましょう。
試験に合格したら最後に認定料(約5,000円)を払い無事に認定取得となります。試験に合格したらあとは認定料を払い無事に認定取得となります。
更新について
更新は6年ごとに必要です。必要な単位数はなんと100単位に増えます。また、必要な各項目の単位数がすべて2倍になっています。一方で、1年間に最低取得単位は10単位、ここは変わりません。更新を忘れると、他の認定・専門の更新へも影響が出ますので、必ず毎年確認しましょう。
まとめ
今回は日本病院薬剤師会について、特に日本病院薬剤師会認定薬剤師について紹介しました。この認定は書く専門資格のベースになる認定です。専門分野で確約したい薬剤師さんは可能な限り早く取得できるようにしましょう。
薬剤師が臨床現場の最前線で活躍できるのは最長で15年(25歳~40歳を想定)くらいです。その間に自分を磨き上げ、後進を育てるとなると時間は必要です。そのためには、いち早く認定を取得する必要があると思います。
後になってもっと早く準備しておけばよかったと後悔しないように、必要な準備は早く始めておきましょう。
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