抗菌化学療法認定薬剤師の症例報告の準備は順調ですか?
症例報告を作成したものの
「身近に症例を確認してもらえる人がいない」
「このまま提出して、落ちるのではないか心配」
といった不安は消えないと思います。
今回は、そのような方に向けて、セルフチェック項目を作成しました。
結果を保障することはできませんが、お役に立てれば幸いです。
認定・専門の申請をするうえで必要となります。
今回は、症例報告の書き方がわからない、
わかりやすい症例報告を書けるようになりたい、
そんな方のお役に立てるよう、まとめました。
これから抗菌化学療法認定薬剤師を目指す方はまずは下の記事からご覧ください。
![](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/07/writing-g5965f49df_640.jpg)
症例報告の目的
まずは前提条件、認定・専門申請のために必要な症例報告の目的についてです。
今回の目的は、
「自分の介入した内容がわかりやすくまとめてある」
より端的に説明すると、
「自分の介入内容をアピールする」
になります。
つまり、患者さんの経過だけをまとめるのでは不十分です。
![トリケラ君](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-7.png)
自分は専門知識を駆使して患者さんに介入しました
って言えることが大事なんだね
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
抗菌化学療法認定薬剤師では、
抗菌薬に関する正しい知識を持ちて介入ができたかを示しましょう。
症例報告の上段の構成
症例報告の例を提示します。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
抗菌化学療法認定薬剤師の症例見本を基に説明するね。
![](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/09/syourei-.png)
「上段の症例介入・情報提供内容の要約」
ここでは、以下の6項目について確認しましょう。
- 患者背景
- 現疾患の経過
- 問題点
- 介入の根拠
- 介入内容
- 結果(成果、安全性の確認)
患者背景
初めにどんな患者さんかをまとめましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、術後の患者さんであること、
術後に腹膜炎を起こしたことが書かれています
![プテラさん](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-8.png)
どんな患者さんかをイメージするための情報ですね。
ここでは最低限の患者情報が必要になります。
具体的には、
①どんな背景の患者さんか?
②どんな感染症になったか?
この2点は必ず記載しましょう。
本来の症例報告で必要な年齢、性別、体重は左側の患者背景に記載する場所があるので省略します。
現疾患の経過
次に現疾患の経過の情報を記載しましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、これまでの治療歴(SBT/ABPCの投与)が記載されています。
具体的には、以下の項目が含まれているか確認しましょう。
- 診断
- 治療内容
- すでに投与されている抗菌薬
治療途中からの介入では、これまでの過程が重要になります。
特に抗菌薬の使用歴は重要です。
ある場合は必ず記載しましょう。
また、抗菌薬の記載については日本化学療法学会で定められた略語を使いましょう。
この場合はいきなり略語を使用しても良いようです。
それ以外の略語を使用する場合(例ではCcrなど)は必ず何の略化わかるように
初回は正式名称で記載しましょう。
一方で、治療開始時から介入できた場合はこの項目は無もありうるとおもいます。
![プテラさん](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-8.png)
救急の初療などに入っている薬剤師さんでは
初めからかかわる症例もあると思います。
問題点
次に問題点です。ここでは介入が必要な理由を明示しましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、CRPの上昇から広域抗菌薬への変更を
医師が考慮していることが問題になってます。
問題点を明らかにし、介入内容につなげるための伏線を貼りましょう。
文章として、介入の根拠と前後することはあると思います。
記載する順番はそこまで気にしなくとも良いと思います。
問題点がなぜ問題なのかについては、上段では詳細に記載しなくとも良いと思います。
下段の考察でしっかり述べましょう。
介入の根拠
次が一番重要といっても過言ではありません。
介入の根拠です。
ガイドラインや添付文書、治療指針など、しっかりとした根拠を持った提案をしましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、腹水からは腸球菌のみが検出されていることから
スペクトルを広げる必要がないと考えられることが根拠です。
この際、ガイドラインが無いこともありますが、書籍や添付文書でも構いません。
噂では化学療法学会の書籍を使うとよいとも言われていますが、
審議は定かではありません。あくまで噂です。
例ではサンフォードを使っているので大丈夫だと思います。
自分は化学療法学会が出版しているJAID/JSC感染症治療ガイドを参考書籍にあげ合格しました。
もし、ここでのNGワードを上げるなら、
「いつもの処方」や「病院のプロトコールに従って」などでしょうか。
自分で考えていないことがバレバレです。
介入内容
ここが一番のアピールポイントです。
自分がどのような提案をしたのかを具体的に記載しましょう。
そして、下線を引くのを忘れてはいけません。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、抗菌薬の増量を提案していますね。
この際、
薬剤名や投与量、投与方法、具体的な観察項目、投与期間などが具体的に提案・記載しましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
日ごろの介入の時にも意識すると段違いに良い介入になるよ
なお、ここでもNGワードを上げるなら、「疑義照会した」です。
一般的に認定や専門の症例報告では、医師への確認や疑義照会は不十分とされています。
![プテラさん](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-8.png)
それは専門家としての意見でなく、
薬剤師の通常業務の一部として見られるからですね。
結果(成果、安全性の確認)
最後に結果です。
介入後の治療はどうなっかた記載しましょう。
特に、問題点は解決できたのか、治療は終了したのか、有害事象は起きていないのか
の3つは必ず記載したほうが良いです。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では治療が完了したこと、CRPが低下したこと、再発が無いこと
が記載されています。
例では安全性、有害事象の有無は記載がないですが、
特有の有害事象がある薬剤や有害事象を回避するための介入では必須になります。
また、初回治療から介入した場合は「アレルギー症状なし」の記載はあっても良いと思います。
![トリケラ君](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-7.png)
効果だけでなく安全性にも配慮する姿勢は大事だね。
症例報告の下段の構成
上段と同じく症例報告の例を提示します。
![](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/09/syourei-1-1.png)
下段の構成要素は以下の3つです。
- 介入の詳細な根拠
- 介入内容を簡潔に提示
- この症例から学んだこと
介入の詳細な根拠
ここでは、上段より詳細な根拠を記載しましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
例では、Ccrより腎機能が良いことから
サンフォードの記載を根拠に適正な投与量を提案しているね。
ここで確認すべきことはガイドラインの年代についての記載が漏れないようにしましょう。
最近ガイドラインが改定されている場合などは、過去のガイドラインで推奨された内容
であれば症例報告は問題ありませんでした。
最近ではTDMのガイドラインが改定されました。
ガイドラインは年代は必ず確認しておきましょう。
また、上段編で前述しました
参考書籍についてはサンフォード例に挙げられていることから大丈夫です。
自分は、化学療法学会が出版しているJAID/JSC感染症治療ガイドを参考書籍にあげ合格しました。
介入内容を簡潔に提示
次に、下段でも介入内容を簡潔に記載しましょう。
詳細は上段に任せるとして、上述した根拠を参考にどのような介入をしたか程度は記載しましょう。
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
あくまでも介入内容は上段
下段はその根拠を中心に記載しましょう。
この症例から学んだこと
最後に今回の症例を通して学んだことについて記載しましょう。
![トリケラ君](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-7.png)
感想でいいの?
![ダイナ](https://dainaphblog.com/wp-content/uploads/2022/06/名称未設定のデザイン-6.png)
感想ではないかな。
根拠を参照して、その通りにやったら治療がうまくいきました
といった具合にまとめるといいよ
例では、腎機能に合わせた抗菌薬の投与量で治療したら症状が改善したことから、
適正量での治療が望ましいことを学んだ、ことを記載しています。
自分は、根拠を引用して、
「〇〇を参照して治療を行った結果治療が完遂できた。」
「〇〇したことで、有害事象を避ける/防ぐことができた。」
などでしょうか。
感想文にならないようにすることが望ましいですが、
素直に今回の症例から学んだこと、その結果として治療がうまくいったことを記載しましょう。
まとめ
今回のまとめです。
症例報告の構成要素は以下の6つです。
- 患者背景
- 現疾患の経過
- 問題点
- 介入の根拠
- 介入内容
- 結果(成果、安全性の確認)
- 介入の詳細な根拠
- 介入内容を簡潔に提示
- この症例から学んだこと
以上の6+3点を最後に自身で確認しておけば大丈夫です。
初めて症例をまとめて多くの不安があると思います。
それでも、15症例を積み上げてきた中で多くを学び、経験を積んできたと思います。
症例報告のお作法は今回示した内容で問題ないと思いますが、
それよりもこれまでの自身の頑張りを信じてバシッと提出しましょう。
そして、認定試験に合格した後は、
これから目指す方にその経験を共有してもらえればと思います。
自分も指導を通してさらに多くを学び、経験することができました。
それでは皆さん、合格目指して頑張って下さい。
コメント
ダイナ先生初めまして
今年度IDCP受験予定の薬剤師です
症例の提出にあたり、このサイトの存在にとても助けられました
まだ書類通過の結果は出ませんが、ありがとうございました!!
コメントいただきまた、そのように言っていただきありがとうございます。
書類通過することをお祈りしております。
試験も頑張ってください。