以前紹介しましたバンコマイシンのTDM、実際に使っていますか?
今回の抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022で大幅改定されました。
特に
①指標がトラフ値からACUに変更、
②ピーク値とトラフ値の2点採血
は衝撃の変更でした。
一方で、実はテイコプラニンも改定されていたことをご存じですか?
今回はそんなテイコプラニンのガイドラインの変更点について紹介します。
今回も、
TDMが苦手で何をすればよいかわからない人、
新しいTDMガイドラインの改定点を知りたい人は
是非ご覧ください。
※今回はわかりやすく要約することを目的としましています。
※※実際に治療に用いる場合は原著を確認したうえでTDMを行ってください。
テイコプラニンとは?
初めにテイコプラニンについての紹介です。
テイコプラニンはバンコマイシン同じグリコペプチド系の抗菌薬です。
そのため、バンコマイシン同様にMRSAに対して有効です。
一方で、バンコマイシンに耐性のある場合、テイコプラニンでも耐性になります。
バンコマイシンと比較したときの特徴としては、
バンコマイシンと比較して腎機能障害が少ないといわれています。
そのため、バンコマイシンが利用できない、しにくい場合に利用する立ち位置です。
時々、医師からテイコプラニン指定でTDMのお願いをされるので
テイコプラニンもしっかりと覚えておきましょう。
そして、もう一点注意事項です。
テイコプラニンはアメリカでは認可されていません。
そのため、情報量ではバンコマイシンと比較して圧倒的に劣ります。
テイコプラニンのTDMの適応について
初めに、テイコプラニンのTDMの対象となる症例についてです。
TDMの目的は繰り返しですが、①治療効果の担保、②有害事象の防止になります。
ガイドライン上でTDMの対象患者にあげられている患者は以下の通りです。
詳しくは後述しますが、高用量負荷投与は多くの症例では推奨される、
というよりもしないと十分な血中濃度が得られません。
ほぼすべての症例でTDMは必要になりますね。
TDMに使用する指標
次はテイコプラニンのTDMの指標です。
バンコマイシンはトラフ値からAUCに変わったんだよね。
テイコプラニンはトラフ値のままだから安心して笑
ガイドラインでも本来はAUC/MICが推奨されていますが、
解析ソフトがないことや、ACU/MICでは副作用のリスクも問題にならないケースが多いため、
現実的なトラフ値を指標としたTDMを推奨しているようです。
次の改定ではAUC/MICを指標にしたガイドラインになるかもしれませんね。
テイコプラニンの目標トラフ
初めにテイコプラニンの目標トラフ値です。
以前のガイドラインでは目標トラフ値=15~20µg/mLでした。
現在は以下のような修正が入りました。
個々での複雑性感染症には心内膜炎や骨関節感染症が含まれます。
ここが変更点の1つ目です。
目標トラフ値の上限が40µg/mLになりました。
十分に投与しても比較的安全に利用できることが示されています。
テイコプラニンの負荷投与量
まずは、初めに添付文書の記載を見てみましょう
この方法ではほぼ確実に目標トラフに達しません。
ガイドラインで推奨されている負荷投与量は以下の通りです。
こんな高用量、負荷投与するんだね
こうでもしないと目標トラフ値に到達しないんだよ。
ここが改定ポイントその2です。
その後の維持投与量は6.7mg/kg×1回です。
また、TDMの実施時期は以下の通りです。
テイコプラニンは半減期が60時間と非常に長いです。
そのため定常状態(半減期×4~5=12.5日間)を待っていては治療期間が終わってしまいます。
そのため、初期の段階でTDMを行い微調整をすることが推奨されています。
ここでもう一点注意が必要です。
施設にもよりますが、テイコプラニンの濃度測定は、
多くの施設では外注しているため、測定から結果が出るまで2-3日かかる可能性があります。
そのため、低めに設定して、TDMの結果を見て投与量を挙げるのでは不十分になります。
だからしっかり負荷投与をする必要があるんですね。
まとめ
テイコプラニンの新規ガイドラインの内容についてまとめました。
主な変更点は以下の2つです。
- 目標トラフ値が複雑性感染症や重症例で20~40µg/mLに変更
- 負荷投与量での投与量がさらに増加
今回の改定でテイコプラニンのTDMは大きく取り上げられていません。
そのため、これから勉強する人にもチャンスです。
学ぶことも大切ですが、実践して成功、失敗の原因を考えてレベルアップしていきましょう。
また、TDMの症例は抗菌化学療法認定薬剤師の症例報告にもなりますので頑張ってください。
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